平和の種をまく ボスニアの少女エミナ


誰も戦争などしたくなかったのに、気がついたら始まっていたというボスニア。3年半にわたった戦争では、25万以上の人が命を落としたといわれる。だが、戦後11年目を迎えたボスニアでは、一度は敵として殺し合った民族どうしが、コミュニティ・ガーデンという緑の農園でふたたび心を通わせる試みが続いている。この写真絵本の主人公は、農園に通う11歳の少女エミナ。戦争の記憶はない。戦争がどういうものだったか、なぜ起きたのか、大人たちに尋ねてわかったのは、「ふつうの人たちは誰も戦争なんかしたくなかった」ということ。そんな彼女が、敵だった民族の女の子ナダと農園で出会い、大の仲よしになる。「ナダと戦うなんて考えられない、もう二度と戦争にならないためにはどうしたらいいの?」エミナの問いは人ごとではない。戦争をしてはならないという意識が薄れ、平和が絶対でなくなりつつあるいまの日本でこそ、子どもたちといっしょにこの問いをかみしめ、私たち一人一人に何ができるのか考えたい。

岩崎書店 2006年刊行 本体 1500円 + 税

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